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■[ 第四回 ] 日本茶の歴史

世界には紅茶や中国茶、日本茶など、いろいろなお茶がありますが、原料は同じツバキ科の常緑樹。
中でも日本で一番飲まれているのが、ご存知の通り日本茶です。
現在、私たちが日常的に何気なく飲んでいるこの日本茶。これほど親しまれるまでには実は長い年月がかかっているのです。
その起源をたどってみると、中国から渡ってきたという渡来説と、もともと日本にお茶の木があったという自生説の二つがありますが、渡来説のほうが有力のようです。

特権階級に、薬として珍重されたのがはじまり

最初に日本にお茶を伝えたといわれているのが、奈良・平安時代に中国へ渡った遣唐使や最澄、空海らの留学僧たち。
彼らは中国で茶のいろいろな効能を経験し、その種子を日本に持ち帰ったと伝えられています。
当時、日本の天皇や皇族たちは中国に憧れ、さまざまな文化を輸入していましたが、お茶もその中のひとつでした。
とはいえお茶は大変貴重なものだった為に、貴族や僧侶などの特権階級にしか縁のないものでした。
これらは『日本書紀』という書物の中にも記されていて、「梵釈寺の永忠が、近江の国を訪れた嵯峨天皇にお茶を煎じて献じた」と書かれています。
これがきっかけで嵯峨天皇は近畿地方にお茶の栽培を命じ、特権階級の儀式や行事に用いられるようになりました。しかし、やがて遣唐使が廃止されたせいもあるのか、この後300年以上にわたってお茶に関する書物及び記録に登場しなくなってしまいます。その後再びお茶が日本に伝えられるのは、鎌倉時代になってのこと。
禅の修業のために中国に留学していた栄西(臨済宗の開祖)が茶の種子を持ち帰り、植えたことがきっかけでした。
栄西は日本ではじめてのお茶の本『喫茶養生記』を著します。この中で栄西は、お茶は五臓六腑の薬であり、不老長寿の秘薬として紹介しています。
「茶は養生の仙薬、延命の妙術なり」と、その効能を記した言葉は有名です。
近年になって明らかにされたお茶の効能が、すでにこの頃に言明されていたわけです。
そしてこの時代には、お茶は貴族社会だけのものから、禅宗と結びついていた武士の間にも広まっていきました。

江戸時代に嗜好品としての日本茶が確立

ここまでは薬としての効果が主に珍重されてきたお茶ですが、室町時代後期になると少しずつ町人たち庶民が、嗜好品として掛茶屋で一服一銭のお茶を楽しむところが普及してきました。
それから桃山時代に千利休が茶の湯、侘茶(わびちゃ)という文化を作り上げ、ますます町人階級に広まりました。
それが現在の茶道に受け継がれています。
そして江戸時代中期になると、自由に飲むことの出来る煎茶が急速に一般に浸透し、現在のようなお茶の楽しみ方が広まっていきました。
こうして驚くほど長い長い年月を経て、お茶は日常茶飯事という言葉にもあるように、私たちの毎日の生活の中に欠かせないものになっていったのです。

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